私はNAGA解析にかけた対局のNAGA度・悪手率を記録していました。
といっても、何か目的意識があったわけではなく、なんとなく習慣として続けている程度のものだったのですが... 。
データもそこそこ溜まってきたので、これを機にデータを整理し、有効活用して供養したいと思います。
調べたこと
① 過去9ヶ月間のNAGA度、悪手率の推移を可視化しました
② ラスの後は打牌のクオリティが落ちるかを検証しました
③ 日ごとのコンディションの良し悪しは存在するかを検証しました
④ ポイント状況で打牌のクオリティが変わるかを検証しました
NAGA記録データについて
今回はNAGAの守備型(ガンマタイプ)を参照した 2023年6月 ~ 2024年2月の記録をデータとして使用します。
ちなみに、私が守備型のガンマタイプを参照している理由は、ガンマが一番懐が広い(NAGA度が高く出る)気がするためです。
(整形したデータ↓)
2023年6月以降、私は鳳凰卓東南戦を1100半荘プレイしており、そのうちNAGA解析にかけたのは451半荘でした。
検証
検証① 月ごとのNAGA度、悪手率の推移
早速結果を図示します。NAGA度については線形モデル(LM)、悪手率については一般化線形モデル(GLM)で近似直線(曲線)も同時に図示しています。
全期間での平均NAGA度は91.5、平均悪手率は2.92% でした。
......まぁ、フーンって感じですね。
近似線によると、統計的に有意な実力の変化は見られませんでした。
実力が向上しているという結果になることを望んでいましたが、まぁ麻雀ですので、そんな簡単に上手くはなれないということでしょう。
しかし、心の目で見ればNAGA度は上昇傾向、悪手率は減少傾向にあります(実際近似線はわずかにその傾向を示しています)。
分析手(ぶんせきて)としてはこの程度の傾向はランダムのブレによる可能性が高いと言わざるを得ませんが、打ち手(うちて)としてはそこに意味を見出したくなってしまいます。
検証② ラスのあとは打牌のクオリティが落ちるか
ここでは、前の対局の着順が次の対局の内容に影響を及ぼしているかを調べました。
たとえば、ラスを引いた次の半荘はNAGA度が低くなるのではないか、ということです。
一方で、「寝たら気分はリセットされる」と考え、その日初めてプレイする対局は、「前の着順なし」として別に分けて考えました。
こちらも、NAGA度と悪手率についてそれぞれ検証しました。
データ数が多くはないこともあり、統計的に有意な結果は得られませんでした。
しかし意外にも、ラスを引いた次の対局の内容が悪くなる、という結果は得られないどころか、NAGA度・悪手率ともにむしろ内容が良くなっている傾向が見られました。
検証③ 日ごとのコンディションの良し悪しは存在するか
ここでは日ごとのコンディション、というものが存在するかを調べました。
「なんか今日は上手く打ててる気がする」「今日は場がよく見える...」的な話はあるとも聞きますが、NAGA度・悪手率に日ごとの影響は検出されるでしょうか。
この節では図らしい図はないので、代わりに技術的な話を書いておこうと思います(興味ない人は飛ばしてください)。
以下のモデルⅠとモデルⅡのどちらがより優れているかを調べました。
モデルⅠ : 日ごとのコンディションによる影響がないモデル
このモデルでは簡単に、すべての対局が独立試行であると仮定します。
(NAGA度を指標とした場合には)対局結果のNAGA度()が真の実力としてのNAGA度()から標準偏差の正規分布誤差をもって生成されると考えます(簡単に言えば、単なる正規分布モデルです)。
モデルⅡ : 日ごとのコンディションによる影響があるモデル
モデルⅠではすべての試行を独立としましたが、ここにその日の実力 の階層を挿入します。
すなわち、真の実力としてのNAGA度()からその日の実力 が生成され、さらにそこから対局結果のNAGA度()が生成される、というモデルです(簡単に言えば、正規分布×2です)。
どちらが優れているかの判断には、WAICと呼ばれる情報量基準を用いました。
また、悪手率を指標とした場合には、悪手率は「打牌選択回数における悪手回数」の割合データなので、正規分布ではなく二項分布をもちいましたが、それ以外は同じです。
結果↓
WAICは値が小さいほど優れたモデルであることを示します。
したがって、今回の検証では、NAGA度、悪手率どちらの指標を用いた場合でも、
「日ごとのコンディションの良し悪し」は検出されませんでした。
とはいえ、NAGA度については、両モデルのWAICの差は0.2程度であり、大きな差はありませんでした。
WAIC(AIC)の概念的な観点から解釈すれば「その日のコンディションを考慮したモデルではほんの少しだけ予測精度が向上したが、モデルを複雑化するほどではなかった」といったところでしょうか。
検証④ ポイント状況で打牌のクオリティが変わるか
ここではポイント状況と打牌選択の質の関係を検討しました。
打ち手としては、体感的に、ポイントが3桁になってくると萎え萎えに、折り返し超えるとイケイケドンドンな気持ちになる気がするので、そこを基準に分類しました。
(結果の図↓)
データ数の問題もあるので、統計的に有意な差はありませんでしたが、やはりポイントを持ってるイケイケドンドンモードのときは内容がいい気がしなくもない、という結果になりました。
ポイントを持っているときは、NAGA度にして平均0.7、悪手率にして平均0.6% の変化が見られるので、意外に馬鹿にならない差かもしれません。
まとめ
予想はしていましたが、データの数が450程度ですと、やはり統計的な指標から確度をもって断言できる事柄はほとんどなく、
結果的には図をまとめただけみたいになってしまったのは残念です。
一方で、これは分析手(ぶんせきて)としては残念なことですが、打ち手(うちて)としては素晴らしいことかもしれません。
というのも、今回の検証でその日の体調や気分で打牌が大きく変わることはなく、仮に前の対局でラスを引いていようとも、厳しいポイント状況にあろうとも、メンタルをブレさずに淡々と打牌を続ける理想の打ち手の姿が浮かび上がったと言えなくもないからです。
これからもNAGA記録はとっていこうと思うので、今回書いたコードを元に、半年くらいを目処に内容を更新していきたいと思います。