Ichijoji Sagarimatsu

統計モデリング 生態学のデータ解析・麻雀の解析など

【麻雀】【天鳳】麻雀の「スタイル」の解析

はじめに

本記事は、「麻雀のスタイル」なるものを、主成分分析というデータ分析手法を用いて明らかにしようという記事です。

本記事では 麻雀におけるプレイヤースタイルは存在するという前提で話を進めたいと思います。

解析の流れ

データには、天鳳鳳凰卓において、長期で好成績を残しているプレイヤー(いわゆる"鉄強")36ID(一部同一人物の別アカウントを含む)のスタッツを用いました。

スタッツには、成績に影響があると考えられる以下の12項目を用いました。

・副露率
・流局時聴牌率:流局した際に聴牌している確率
和了
和了平均得点:和了時の平均打点
・副露平均得点:副露で和了した際の平均打点
和了順目
・ツモ率
・リーチ率
・リーチ先制率
・リーチ成功率
・放銃率
・放銃平均得点:放銃時の平均放銃打点

スタッツの取得にはのどっちさん(https://nodocchi.moe/tenhoulog/)を利用させていただきました。

前提として、取り上げたプレイヤーは皆鉄強であり、どのスタイルが良い(悪い)という話ではないということを理解しておいてもらえればと思います。

解析には主成分分析という手法を用いました。

結果

見方は後で説明するとして、とりあえず、結果の図を載せます。

12変数を2次元に圧縮し、プレイヤーをプロット

今回の検証には12のスタッツを用いています。
本来12の変数を図示するには12次元が必要なのですが、それを2次元まで圧縮して図示したものが上図になります。
当然、本来12次元の情報を2次元に図示するにあたっては、いくらか情報が削ぎ落とされていますが、その損失をできるだけ抑えるように上手くやってくれるのが主成分分析になります。
今回の解析においては、上の図は元々の情報の66.6%を保持しています

図に見方についての疑問点は
・縦軸と横軸はなんなの?
・矢印は何?
の2点かと思います。

軸について

横軸と縦軸は、12の変数(スタッツ)を適当に重み付けして合成された軸になります。
スタッツの矢印は、軸方向に与えている影響の大きさを示します。

横軸について

横軸に最も大きな影響を与えているスタッツは、「和了平均得点」であり、ついで「副露率」「副露平均得点」、その次に「和了率」「和了順目」でした。

すなわち、「和了平均得点」「副露平均得点」が大きいプレイヤーは図の右側に、「副露率」が高いプレイヤーは図の左側にプロットされることを示しています。
矢印が逆方向にあるのは、それぞれのスタッツが負の相関を持っていることを示しており、副露率が高いプレイヤーは打点が小さくなることを反映していると考えられます。
どうやら横軸は「副露率と打点」を示していると考えられそうです。

図の右側:面前型・低和了率・高打点
図の左側:副露型・高和了率・低打点

縦軸について

主成分分析において、横軸と縦軸は完全に無相関であることを意味します。

すなわち、横軸が「スタイル①:副露型 / 門前型」を示していると考えれば、縦軸は、それとは全く独立に取りうるスタイル②について示唆していると捉えられます。

縦軸に大きな影響を与えているスタッツは、「リーチ率」「放銃率」「流局聴牌率」ついで「放銃平均得点」「リーチ成功率」「和了率」でした。

どうやら、図の縦軸は「立直率」「放銃率」「和了率」を示していそうです。
「リーチ率」「放銃率」「流局聴牌率」「放銃平均得点」「和了率」が高いプレイヤーは図の上側に、それらが低い代わりに「リーチ成功率」は高いプレイヤーが図の下側にプロットされると考えられます。

図の上側:リーチ型・高和了・高放銃
図の下側:ダマ型・低和了・低放銃

まとめ

再掲

以上より、麻雀のスタイルは

門前リーチ型(図の右上領域)
門前ダマ型(図の右下領域)
副露リーチ型(図の左上領域)
副露ダマ型(図の左下領域)

で分類できるということがわかりました。

繰り返しますが、面白いのは横軸と縦軸は無相関であるということです。
実際、元データの相関関係を見てみると、「副露率」と「リーチ率」の相関係数は0.047であり、限りなく無相関でした。

これはすなわち、「門前リーチ派」「門前ダマ派」「副露リーチ派」「副露ダマ派」はどれもスタイルとして取り得るということです

もしも牌譜等を見て勉強するときは、スタイルが違いすぎる人よりも、ある程度自分とスタイルが近い人を参照すればいいのではないかと思います。

自分のスタッツを入力してどこにプロットされるかを示すWebアプリを実装しようかと考えましたが、一旦見送りました...もしも需要があれば作ってみたいと考えるので、気軽にコメント等くれるとうれしいです

ちなみに私は「副露ダマ型」でした。

考察(2024/3/10追記)

縦軸が「立直率」「放銃率」「和了率」を反映しているのは間違いなそうですが、それを一纏めにリーチ型 / ダマ型 と分類することに関しては議論の余地があるかもしれません。

というのも、今回はいわゆる"鉄強"ばかりを集めているので、基本的にどのプレイヤーもリーチするべき手はリーチし、ダマるべき手はダマっているはずです。

とすると、縦軸は、単に「いまこの手をリーチするか」というリーチ判断を示しているのではなく、そこに至るまでのプロセスを反映していると考えるのが妥当かもしれません。

たとえば、先制を取られた時に攻撃的な判断をするか、あっさりやめる守備的な判断を取るか、といったことです。
前者は追いついた場合に追っかけ立直することも増えるでしょうから、結果的に「立直率」「和了率」「放銃率」はどれも上昇しそうです。

その場合、縦軸は「攻撃型」か「守備型」かを反映していると捉えることもできそうです。

だとすると結果的には麻雀のスタイルは

門前攻撃型(図の右上領域)
門前守備型(図の右下領域)
副露攻撃型(図の左上領域)
副露守備型(図の左下領域)

で表されるということになります。

この表現は麻雀界隈ではよくある表現ですが、それが統計的に正しい分類であるということがわかるのも面白いですね。